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結局、冬依たち3人を交えた5人でディナーを終えた春一は、
「子どもがそんなもの使うんじゃない」
と、会計は自分のカードで支払った。
クリスマスデートというより、親子で囲むファミリーレストランみたいになったが、鈴音が楽しそうだったから、まあいい。
しかも長島の兄が予約したというテーブルは、シェフの調理を眺められるプライベートダイニングで、別の壁には魚が泳ぐ水槽まであった。
鈴音が、それを見てひどく感激した。
「わあすごいですね春さん。熱帯魚とかいますよ。これイケスじゃないですよね」
魚屋とごっちゃにしているようだが、そんな風に喜ぶ顔を見られたのだから良かった。
このデートは成功だ。
成功だった。
そう思わなければ、春一はちょっと悲しすぎるではないか。
吾妻におごってもらうなんて真っ平ごめんだから、5人分の伝票にサインをしたが、正直、来月の支払いが今から怖い。
でもそんな本音、もちろん鈴音に悟られるわけにはいかず、春一は、
「楽しめた?」
なんて余裕をかまして鈴音に尋ねてみる。
すると、
「はい春さん、美味しかったし楽しかったです」
ピカピカの笑顔で鈴音は答えてくれたから、きっとこれからも春一は頑張れる。
頑張れるはずだ。
そんな春一の精一杯のやせ我慢を見透かしたように、冬依はシレッと次の攻撃を畳みかけてくる。
チェックインしたフロントで、
「ボクたちが泊まる部屋は20階のスイートルームなんだよ」
どこか自慢げに、重厚なカードキーを見せてくる。
「良かったら後で部屋に遊びに来てね、鈴ちゃん」
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