後編 春一&冬依

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結局、冬依たち3人を交えた5人でディナーを終えた春一は、 「子どもがそんなもの使うんじゃない」 と、会計は自分のカードで支払った。 クリスマスデートというより、親子で囲むファミリーレストランみたいになったが、鈴音が楽しそうだったから、まあいい。 しかも長島の兄が予約したというテーブルは、シェフの調理を眺められるプライベートダイニングで、別の壁には魚が泳ぐ水槽まであった。 鈴音が、それを見てひどく感激した。 「わあすごいですね春さん。熱帯魚とかいますよ。これイケスじゃないですよね」 魚屋とごっちゃにしているようだが、そんな風に喜ぶ顔を見られたのだから良かった。 このデートは成功だ。 成功だった。 そう思わなければ、春一はちょっと悲しすぎるではないか。 吾妻におごってもらうなんて真っ平ごめんだから、5人分の伝票にサインをしたが、正直、来月の支払いが今から怖い。 でもそんな本音、もちろん鈴音に悟られるわけにはいかず、春一は、 「楽しめた?」 なんて余裕をかまして鈴音に尋ねてみる。 すると、 「はい春さん、美味しかったし楽しかったです」 ピカピカの笑顔で鈴音は答えてくれたから、きっとこれからも春一は頑張れる。 頑張れるはずだ。 そんな春一の精一杯のやせ我慢を見透かしたように、冬依はシレッと次の攻撃を畳みかけてくる。 チェックインしたフロントで、 「ボクたちが泊まる部屋は20階のスイートルームなんだよ」 どこか自慢げに、重厚なカードキーを見せてくる。 「良かったら後で部屋に遊びに来てね、鈴ちゃん」
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