前編 秋哉&夏樹

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夏樹はニヤリと笑うと、 「さてはカズちゃんを連れ込んだんだな?」 「んなことしてねーよ。カズは昨日のうちにちゃんと帰した」 秋哉は慌てて手を振って否定する。 そこはちゃんと言っておかないと、名誉の毀損だ。 すると夏樹はおもしろくないと息を吐いて、 「んだよ、つまんねーヤツだな。もしかしてヤリ方がわからなかったのか?」 「……」 これが高校生の弟に向かって言い放つことだろうか。 「俺の手ほどきが必要か? 一度経験したら二度と離れられなくなるぜ」 顎に指をかけてくる夏樹を、秋哉は乱暴に振り払う。 「よせってば! オレはナツキと違って、中途半端なことはしねーんだよ」 すると、夏樹はとたんに凄絶ともいえる笑みをその顔に浮かべた。 「へぇ……、俺が中途半端ねぇ」 ジリッとにじり寄ってくる。 「俺が中途半端っていうのはいったい誰の感想だ? じっくり話し合う必要があるから、ぜひに教えてくれ」  「よせってば、――うわっ」 秋哉はベッドから転げ落ちた。 「痛ってー……」 したたかに後頭部を打ちつけて、なんだか散々だ。
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