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夏樹はニヤリと笑うと、
「さてはカズちゃんを連れ込んだんだな?」
「んなことしてねーよ。カズは昨日のうちにちゃんと帰した」
秋哉は慌てて手を振って否定する。
そこはちゃんと言っておかないと、名誉の毀損だ。
すると夏樹はおもしろくないと息を吐いて、
「んだよ、つまんねーヤツだな。もしかしてヤリ方がわからなかったのか?」
「……」
これが高校生の弟に向かって言い放つことだろうか。
「俺の手ほどきが必要か? 一度経験したら二度と離れられなくなるぜ」
顎に指をかけてくる夏樹を、秋哉は乱暴に振り払う。
「よせってば! オレはナツキと違って、中途半端なことはしねーんだよ」
すると、夏樹はとたんに凄絶ともいえる笑みをその顔に浮かべた。
「へぇ……、俺が中途半端ねぇ」
ジリッとにじり寄ってくる。
「俺が中途半端っていうのはいったい誰の感想だ? じっくり話し合う必要があるから、ぜひに教えてくれ」
「よせってば、――うわっ」
秋哉はベッドから転げ落ちた。
「痛ってー……」
したたかに後頭部を打ちつけて、なんだか散々だ。
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