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春一は、
「――鈴音、ちょっとごめん」
言うなり鈴音の両足をすくいあげた。
いきなりのお姫さま抱っこに、鈴音は小さな悲鳴をあげる。
でもすぐに春一の首に腕を回してくる鈴音に、
「うん、そうやって鈴音自ら俺の首に腕を回すほど、俺を欲しがっていて」
春一は、――言う。
「やるよ」
「……」
「俺の全部を鈴音にやる」
「――春さん」
キュッとしがみついてくる鈴音の体温をこれ以上ないほど愛おしく思う。
春一は鈴音を抱いたまま、持っていたカードキーをセンサーにかざした。
実はさっきからドアを開けようとしていたのだが、一度解錠したはずの鍵が、時間が経って再びかかってしまったのだ。
相変わらず決まらない自分に苦笑して、ピッという心地よい解除音を聞く。
これでやっと部屋に入れる。
部屋で鈴音とふたりきりになれば、きっともう放してやれない。
春一は、これ以上近づけないほど側にいる鈴音の体を、もう一度しっかりと抱き直す。
この愛しくも可愛くてたまらない人を、放してやれる気がしない。
「鈴音」
名前を呼べば、恥ずかしそうに頬をそめた鈴音と目が合う。
「俺がどれだけ鈴音を欲しいと思ってるか、わからせてあげる」
そして春一は、今夜最後になる軽いキスを、チュッと鈴音の鼻の頭に落とした。
――了―― 2018.12.24 Merry Christmas!
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