61人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
というわけで秋哉は、次に春一の部屋に行ってみることにした。
「ハルなら、オレがベッド使ったって怒んねーだろーしな」
秋哉が尊敬する長兄が、そんな小さなことで腹をたてるはずがない。
春一のベッドに膝をかけ、
「ハルならきっと加齢臭がするんだぜ」
グフフと含み笑いで春一の枕に鼻を近づけてみる。
と、何気なくヘッドボードの隙間が目に入った。
そこに無造作に置かれていたのはひとつの箱。
――コンドームの箱だ――
「……」
春一はもう十分大人だし、おまけに婚約者の鈴音と同棲中でもある。
こういうのを持っていても当たり前の話だが、急に、
「……ヤメタ」
春一のベッドが生々しく見えた。
ここで寝たら、きっと余計なことをいろいろ想像して、寝るどころではなくなる。
逆に目が冴えてしまいそうだ。
なんていう諸々があって、夏樹の部屋になったわけだ。
夏樹の部屋は入ったとたん、秋哉には馴染みのない香水の香りに、
「臭ッセー」
鼻をしかめることになったが、それでもベッドに潜り込んでしまえば、秋哉のものと同じシーツの糊の香り。
鈴音がまとめて洗濯をしているので、これも当たり前の話なのだが、お陰で秋哉はすぐに眠りに落ちることが出来た。
最初のコメントを投稿しよう!