前編 秋哉&夏樹

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というわけで秋哉は、次に春一の部屋に行ってみることにした。 「ハルなら、オレがベッド使ったって怒んねーだろーしな」 秋哉が尊敬する長兄が、そんな小さなことで腹をたてるはずがない。 春一のベッドに膝をかけ、 「ハルならきっと加齢臭がするんだぜ」 グフフと含み笑いで春一の枕に鼻を近づけてみる。 と、何気なくヘッドボードの隙間が目に入った。 そこに無造作に置かれていたのはひとつの箱。 ――コンドームの箱だ―― 「……」 春一はもう十分大人だし、おまけに婚約者の鈴音と同棲中でもある。 こういうのを持っていても当たり前の話だが、急に、 「……ヤメタ」 春一のベッドが生々しく見えた。 ここで寝たら、きっと余計なことをいろいろ想像して、寝るどころではなくなる。 逆に目が冴えてしまいそうだ。 なんていう諸々があって、夏樹の部屋になったわけだ。 夏樹の部屋は入ったとたん、秋哉には馴染みのない香水の香りに、 「臭ッセー」 鼻をしかめることになったが、それでもベッドに潜り込んでしまえば、秋哉のものと同じシーツの糊の香り。 鈴音がまとめて洗濯をしているので、これも当たり前の話なのだが、お陰で秋哉はすぐに眠りに落ちることが出来た。
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