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中編 春一&鈴音
体より心が疲れたクリスマスの夜を送る夏樹と秋哉だったが、春一たちの方にも小さな事件が起こっていた。
春一は婚約者の鈴音と久しぶりの外泊デートだ。
昼前に家を出て、軽くランチを済ませて、ウインドウショッピングしながら街を歩く。
メインのイルミネーションとディナーにはまだ時間があるので、とてもゆったりした時を過ごせた。
「ほら鈴音。なんでも欲しいものを言えよ。プレゼントするから」
クリスマスに鈴音に何を贈ればいいか検討もつかず、結局本人に聞いてしまう気の利かない春一だったが、最近取れたスクープのお陰で軍資金もある。
車やマンションなどと言われない限り、鈴音の望みなら叶えられるはずだった。
それなのに鈴音は心底驚いた顔をして、
「えっ、今日のデートが春さんからのプレゼントじゃなかったんですか」
欲のないことを言う。
遠慮してるのかと、
「そりゃあそのつもりだけど、でもモノもあった方がいいだろう」
これじゃあ余計に気を使わせるかと、
「クリスマスの記念になるしさ」
と続けると、
「ごめんなさい、私プレゼントをなにも用意してません」
シュンとうなだれてしまう鈴音。
「春さんには買ってなくて……」
「いや鈴音はいいんだよ。いつも作ってくれるメシとかがもうプレゼントみたいなもんだし」
春一は焦って首を振る。
相変わらずの自分の唐変木ぶりにはうんざりする。
こういうとき普通の男は、何て言ってプレゼントを勧めるのだろう。
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