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第1話 出会い
夢を見ていた。
月の明かりがほのかに差し込み、しんと静まり返った板の間に、格子戸の影が真っ直ぐに伸びている。
僕は、右手に日本刀、左手に鏡のようなものを持ち、煙のような何かと対峙していた。
何故かはわからないが、誰かを助けるために、戦おうとしているようだった。
刀をそれに向かっておもいっきり振り下ろしたところで、目が覚めた。
僕は高2の秋、この町に移り住むことになった。
彼女との出会いは、それからひと月たったとても寒い朝のランニング、いつものコースの近所の小高い山の、公園の中にある神社の赤い鳥居のそばだった。
竹ぼうきを持って佇む君は、赤と白でとてもきれいでとても...
この時、何故だかわからないが、僕の目からひとすじの涙がこぼれた。
東の空が少しずつ明るくなり始める頃、朝靄の少しかかった神社の境内、赤と白の巫女姿の白い君は、そこにひっそりと佇んでいた。
遠くに見える君は、朝靄と一緒に消えてしまいそうで...
まるで、冷たい真っ白の世界に、赤く小さく灯る燈籠のロウソクの光のように、はかない存在に思えた。
なぜだろう? 悲しいと感じたわけではなく、どこか懐かしい感じがしていた。
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