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ニヤリと笑いながら腕を組み、屋上の出入り口の近くに佇んでいる姿はどっかの悪役を思わせる。
「あなたが周りに変な目で見られる姿は滑稽でしたよ」
「こいつぅ……」
梨華にわざとちょっかい出していたのか。
「まさか主の所に行くほどブラコンとは思わなかったですけどね。主にはすみませんでした」
「何で私には謝らないのよ!」
「だって、主以外は興味無いですから」
カラかっている様な、無機質の様な表情にイラついたのか、梨華は麗に殴りかかった。
「あんた、いい加減にしなさいっ!」
麗は殴りかかってきた梨華の拳をあざ笑うかの様にスッと華麗に避けられた。
「くらえぇ!」
「ショボい拳ですね」
麗に馬鹿にされながら、梨華は渾身のパンチを何回も繰り出していた。
当たったらひとたまりも無いのは自分が一番知っているがこんなにも当たらないものなのか。
「また、あんた特殊な力を使ってるんじゃないでしょうね!」
「ええ、使ってますが。悪いですか?」
特殊な力を使って悪びれる様子も無い麗に、呆れたのかそれとも力の差を感じたのか分からないが梨華はため息をつく。
「あんたに正々堂々って言葉は無いのね」
そんな台詞を気にも止めずに麗は勝った気でいるのか梨華を煽っている。
「そんな喋ってる暇あるなら攻撃して下さい。それとも、こっちから攻撃して欲しいんですか?」
「攻撃して欲しいって?大体、あんたから喧嘩を吹っ掛けて来たんじゃない。あんたがお兄ちゃんに離れないって言うなら実力行使よ!」
「あなたもやる気ですね……、流石は主の妹です」
どちらとも殺る気満々な表情でお互いに顔を向けている。
麗の力量がどのくらいなのか分からないが、僕の妹はこうなると誰も手出し出来ないのは容易に想像がつく。
二人は戦闘モードに入り、梨華は拳を振り、麗は天使の輪をブーメランの要領で梨華に投げつけていた。
「やめ……」
二人を止めに入ろうとしたら、二人の攻撃が僕の顔面に直撃した。
「主。だ、大丈夫ですか?」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
二人の攻撃が顔面に当たった。
二人が心配そうに僕を見つめている。
女子二人に顔面を殴られて倒れる僕って弱すぎ……。
「キュアリー!!」
麗がいつもの意味の無い呪文を唱えた。
そう言うと、大怪我を負っていた僕の顔の傷跡はみるみる治っていった。
ホントに呪文で治してる様に見えるが実際は違うらしい。
だが、疑いたくなるくらい呪文と顔が治るタイミングが合っている。
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