第1章 天使と僕 第3節~天使になりたかった悪魔の同級生~

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「何も言わずに通り過ぎて、どうしたんですかね?あのポンコツ悪魔は……」 「そ、そうだな」 僕は麗に向かってそういった。 その瞬間、梨華が急に立ち止まった。 「ミリス様……」 「えっ……。ミリス様?」 「どうやら、あのポンコツ悪魔がまた何かやらかしたようですね……」 「おい、梨華大丈夫か!!」 何かに憑りつかれた様にぼっーとしていた突っ立っていた梨華の肩を僕は軽く叩いた。 「はっ、私は何をして……」 「ブラコン妹さんはあのポンコツ悪魔に洗脳されてたんですよ。ポンコツですね」 どうやら、あのポンコツ悪魔がチャームの力を悪用して梨華を洗脳したのかもしれない。 でも、何故か梨華はその洗脳が解けていた。 「でも、何で洗脳が解けたんだ?」 「それは主が素晴らしい人間だからですよ。多分……」 「そうなのか……」 この天使の発言は非常に疑わしいが、そういう事にしておこう。 麗は羽を広げて、突然宙を舞った。 「ま、冗談はさておき。とりあえず、ブラコン妹さんがああなった原因でも探っておきますよ」 「頼む」 「主の頼みならしょうがないですね……。それと、あんな主は見たくないので……」 そういうと、麗は白い羽を散らかせながら飛び去った。 「お兄ちゃん……。私、どうしてたの?さっき洗脳がどうちゃらこうちゃらって……」 「それに……、さっき羽が生えた人が飛んでいった気がするけど」 えっ……。 僕は言葉を失った。 チャームの魔法は、どうやら一部の記憶までも失ってしまうものらしい。 かろうじて、僕の記憶は失っていないらしい。 まぁ、あの天使との出会いなんて今日会ったばかりだからあんまり関係ないけどな。 「気のせいだよ……」 そういうと、ニタニタと梨華は笑い出した。 「ふぅん……、ま、記憶が無いのは嘘だけどね」 「おま、謀ったな!!」 「だって、お兄ちゃん面白いんだもん。あと、それにあの天使邪魔だったし」 蔓延の笑みを浮かべながら梨華は僕にそう言った。 邪魔だったって……、いいシーンが台無しな一言だな。 まぁ、梨華らしいっちゃらしいけどな。 「お兄ちゃんをからかうもんじゃないぞ!!まったく、こんな時に……」 「ははは、こんな切羽詰まってるお兄ちゃん面白いから……」 僕らはそんな事を言いながら止めていた足を踏み出した。 記憶が消えた梨華のたちの悪いジョークともかく、ミリスのチャームは何とかしないとな。 「ちょっと、さっきの冗談はごめん。だけど、足擦り剥いたからお兄ちゃんおんぶして!!」 梨華の足を見ると、たしかに擦り傷が出来ていた。 「どうしたんだ?どこで怪我を……」 「あの天使と争った時あったじゃない?その時ね……」 「ああ……、あれか。無理に歩くのは傷が痛むしな。しょうがない……」 「ありがと!流石、お兄ちゃん!!心が広いね」 傷口が痛そうにしていた梨華を僕は軽々とおんぶして自宅まで運んだ。
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