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張り合っているのか、互いにのしかかりながら睨みつけている光景を目にすると、僕は呆れ顔でため息をついた。
「お兄ちゃん、ため息って酷くない?」
「そうですよ!酷いです……。この妹さんにはしてもいいですけど……」
「はぁ?」
呆れるのも無理はないと思う。
梨華は僕になかなか自立しないし、この天使は妹にちょくちょく煽ってくるし、呆れない方が不自然だろう。
特にここは校内だし、こんなとこで喧嘩するとか周りの迷惑もいいところだ。
「まったく、二人とも喧嘩するなら誰もいないとこでやれよ」
「う、確かに……」
「まぁ、主がそういうならしょうがないですね」
僕のクラスメイトが不思議そうな顔をしている。
どうやら、この天使は周りには見えていないようだ。
「二人?澤田君何言ってるの?」
横から誰かが僕に話しかけてきた。
それは、一ヶ月前にこっちに引っ越してきた転校生の安藤ミリスだった。
「あはは、なんでもない……」
「そうなの?変な澤田君……」
彼女は少し軽蔑してるような目で僕ら兄妹を見ていた。
僕らが変に見られているのはこの天使のせいであって、ただのとばっちりだというのに。
「梨華、ちょっといいか……」
耳元で囁く様に僕は梨華に言った。
梨華を思いっきり引っ張って、先ほどの屋上へと走って行った。
「お、お兄ちゃん。はぁはぁ、どう…した…の」
僕は少し呼吸を落ち着かせて、言葉を発した。
「はぁ……、はぁ……。あの天使、周りに見えてないから梨華は多分変な目で見られてるぞ」
「えっ、見えて無かったの?」
「ふふ、バレてましたか……」
天使の羽がフワリと舞った。
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