春驟雨

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 私は家に帰った。どうやって帰ったのかは、覚えていない。とりあえず、この身が自宅にあるのは事実らしい。  脳内で「そんなものだ」というセリフが執拗に繰り返される。  彼も「そんなもの」と言ったことがあったっけ。それはきっと、あの時だ。  私が「いいネタが見つからない」とぼやいていたあの時。  彼は「いつか心から書きたくなるネタが見つかる」と言った。  私はようやくそれを理解した。  何か強く心に刻みつけられるような出来事があった時、それをネタにしてしまえばいいのだ。  そういうことか。  確かに、そんなものですね。  薫さん、ネタ、見つかりましたよ。 ─────完─────
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