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ぼくはやがて白になる
だれか大切なひとを失うと、ひとつ、またひとつ、白色に近づいていくんだって。
そんなことを話してくれたのは誰だったっけな。
とても昔のことだから、誰に教わったのか思い出せない。
だけどね、その話のことはよく覚えてるんだ。
まずね。声が思い出せなくなっていくんだって。
不思議だね。
亡くなる直前まで残るのは聴覚なのに、忘れてしまうのは声の記憶だっていうんだから。
ぼくの声を聞くと、いつも「どうしたの?」って聞いてくれたよね。
「いつも一緒にいるから」って、ぼくを抱きしめてくれたよね。
ぼくはきっと最期の最期。
この世から旅立つ一秒前まで、ずっとあなたの声を聞いていたいなって思うから。
胸に刻むから。
だからお願い。
ぼくの声、どうか忘れないでほしいなって思ってる。
それからね。顔が思い出せなくなっちゃうんだって。
写真とか動画とかがあるからさ。
見ればきっと思い出せると思うんだ。
だけど、見なくなったらどうだったかな?って悩んじゃうんだって。
ぼくの顔。
大好きだって、たくさん、たくさん写真や動画を撮っていたのを思い出すよ。
アルバムも作ってくれてたよね。
だからお願い。
ときどきでいい。
ぼくがいなくなったら、そっとアルバムを開いてほしい。
いつまでも忘れてほしくないからさ。
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