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クリスマスに奇跡など
あ。
あちこちで光る煌めき。
その中に佇む男の子は、見覚えがあった。
「…高野くん?」
名前を呼ばれてやっとこちらを見た彼は、やっぱり高野くんだった。
「……江上さん?」
柔らかい声は2年前と変わっていない。
…声だけじゃないか。
意外と整った顔や、すらっと長い脚もそのままだ。
周りのキラキラした光の中で、一層際立って見える。
「待ち合わせしてるの?」
こんなところに一人でいるのは、絶対そうだと思った。
だって左手には小さな紙袋。
のに。
「うーん…してた。かな?」
曖昧に笑った顔は、光と対照的に翳っていた。
私の顔がよほど間抜けだったのか、そのままの翳りを残して目が三日月になる。
「今日来れないらしいから。」
噂によるともう3年目のはずの彼女は、確か東京の大学だったと思う。
それでも毎年欠かさず一緒に過ごしている、とどこからともなく聞いていたのに。
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