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「高野くんって、彼女と長いよね。」
「知ってるんだ?」
触れないのも変かと思って、自分から触りに行った質問に、彼は特に驚かなかった。
「そりゃ有名だからね。」
派手ではないけどひっそりと人気な高野くんと、学年でも五本の指に入る美人な彼女。
高2のころから今まで続いているのも、噂のネタとして充分だし。
「彼女、同窓会来るの?」
年明けの同窓会は、成人式の前日だったはず。
「来るよ。」
彼はそう言ってぼーっと噴水を眺めた。
せっかく消えていた翳りが顔をのぞかせている。
自分から振ったのに、そんな顔にさせてしまったことに胸が痛んだ。
ベンチから立ち上がって高野くんの視線を遮る。
「ねぇ、このワンピース可愛いでしょ?」
急に転換した話題に呆れてもいいのに、一瞬目を瞬かせただけで、優しく笑ってくれる。
「可愛いよ。江上さんに似合ってる。」
そのふわっとした笑顔と優しいとこ、結構人気あったよ。っていうのは心の中でだけ呟いた。
「知ってる。」
照れ隠しにおどけて答えて、またベンチの隣に収まった。
「江上さんって、もっと大人しいのかと思ってた。」
カフェオレを一口飲んでそう言う彼は、私のことをちゃんと目に映している。
「大人しいであってるよ。」
「どこが。」
ふっと笑うと目がくしゃっとなる。
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