2人が本棚に入れています
本棚に追加
「高校の時にもっと話せばよかった。」
「ほとんど絡まなかったもんね。」
なのに今、こんなカップルみたいなことしてる。
それは口には出さないけど。
ポツポツ、ポツポツ。穏やかな会話に、楽しいな。と思っているうちに、いつのまにか夜は更けていた。
「…私ね、苗字変わったの。」
何故だろう。
ふと横たわった沈黙に、うっかり口をついて出た言葉。
高校の友達の誰にも言っていないのに、無性に高野くんには言いたくなって、
気付けば吐き出していた。
「両親が離婚したんだ。」
こんなこと言われてもどう反応したらいいか、困らせるだけなのに。
「そうなんだ。」
ほら。困らせちゃった。
私のアホ。
大変だったね。とか、無難なことしか言えないもん。
こんなの。
逆の立場だったら私だってそう。
「江上さんは、今幸せ?」
「え?」
高野くんは、私をじっと見ていた。
「…幸せだよ。」
「ほんとに?」
「ほんと。」
戸惑いながら答えると、彼はふわりと笑った。
「ならいいじゃん。離婚しないのが幸せって限らないもんね。」
最初のコメントを投稿しよう!