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異世界転生
とある麗らかな昼下がり。
街の職人たちは食事を終えて、午後の作業に精を出す。
トンテンカン、トンテンテンと、心地よいリズムが辺りを賑わす。
誰もかもが生業を持ち、それぞれが真面目に仕事に従事するのだ。
……かと思いきや。
どのような共同体であれど、例外と言うものは存在する。
ジョセフとマーリーン。
彼ら2人は明るいうちから働きもせず、村外れの原っぱで寝転んでいた。
本日の天候は穏やか、快晴だ。
時おり視界をゆっくりと横切ろうとする雲を、共に並んで見送っている。
「あーぁ。異世界転生してぇなぁ」
ジョセフが何の気なしに言った。
読書家であるマーリーンは、この言葉を耳にするなり、長年の友に問いかけた。
「異世界……なんです?」
「異世界転生だよ。知らない?」
「ええ、全く」
「知り合いに作家が居るんだけどよ。この前、書いてたんだよね。こことは別世界の物語をさ」
「空想モノってやつですよね。このご時世、別にファンタジー作品は珍しくないと思うんですが」
「これは在り来たりな文学じゃない。自分が全く別の世界に、マルッと飛ばされちまうんだ。画期的だろ?」
「はぁ……そうですか」
マーリーンは特に興味を抱かず、空を見上げたままでいる。
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