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『話は終わり』とでも言いたげな様子だ。
そんなツレない態度を見せつけても、長年の友ジョセフは啓蒙する口を閉じなかった。
「お前さぁ、ワクワクしねぇの? こことは全く違う世界に興味持たねぇの?」
「そう言われましてもね。割とどうでも良いですよ」
「例えばそうだなぁ。鉄の塊が走ったり、大空を飛び回ったら、どうだ?」
「鉄が? あり得ませんよ」
「異世界なら、ある得るかもなぁ」
「……どういう事です?」
「おっ。食いついてきたな」
「良いから教えてくださいよ」
ジョセフは勿体振るようにして、懐から幾枚かの紙片を取り出した。
そこには細かなイラストが乱雑に描かれていた。
「何ですか、この汚い紙は」
「例の作家が描いたんだよ。異世界に出てくる道具の資料っつうか、イメージイラストだってよ」
「見ても訳わかんないですね。ジョセフは分かるんですか?」
「説明を受けたからな。さっきの鉄はこれだ。中に人を乗せて走るんだってよ」
「意味がわからない……馬やロバに荷車を牽かせれば良いじゃないですか」
「理由は知らねぇ。馬がいねぇんじゃないか?」
「だからって、鉄の中に入ろうとか考えなくても……」
「どうだ。興味が湧いたか?」
「ええ、俄然」
最早どちらの視界にも空など映ってはいない。
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