第1章

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高村くんがモデルに復帰してからはどこに行くのも二人一緒だった。 撮影も海外での仕事も…食べるときも寝るときもいつも一緒だった。 そんなオシドリぶりが業界で評判になると、テレビや雑誌に取り上げられた。 事件のことや高村くんの手厚い介護で半年意識不明だった私がここまで回復したことなど、ドラマにもなった。 コマーシャルや雑誌やら夫婦でのオファーが増えていった。 その頃、私は筋力もついて元気な頃と変わらないくらい歩けるようになっていた。 そんなとき、二人めの子供を授かった。 高村くんの喜びようは、今でも鮮明に思い出せる。 私を抱き締めて、「ありがとう夕貴。最高のプレゼントだよ。 夕貴がいて、子供たちがいて、俺たち家族だな。」 「子供たち?」 「そうだよ、俺たちの最初の子はひかりだからな。」 そう言って涙ぐんだ。 「え?…ひかり?」 名前を聞いて懐かしい気がした… 誰だか思い出せない。 「そう、ひかりだよ。」 そういえば、私が半年眠っていた時、一緒にいた女の子の名がひかりだった。 あの頃のことは高村くんに話してなかったのに… ひかりちゃんと呼んでいたことを知らないはずなのに… 「何でひかりちゃんの名前を知ってるの?」 驚きの顔を高村くんに向けると、彼は平然と答える。 「俺が夕貴のお腹にできたと分かってから勝手に名前をつけて心の中で呼んでたから… 夕貴には言わなかったけどな。」 「ほんとうに?」
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