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「ほんとだよ。良い名前だろ?
夕貴が意識不明のときもずっとひかりにお願いしていた。ママを連れていかないでって。
ママがいなくなると生きていけないんだって…」
ひかりちゃんの言葉を思い出した。
『パパがひかりにママを返してって泣いてるの。』
ひかりちゃんが悲しそうにパパが好きだからママを返すって言っていた。
「…私ね、意識がないとき、ひかりちゃんと一緒にいたの。
ひかりちゃんがパパが泣いてるってパパに返してあげるって…」
ひかりちゃんの言ってたことは本当だった。
高村くんと子供の名前を話しことがないのに、お互いひかりと呼んでいたことが不思議だった。
「そうか…俺がひかりにお願いしていたことはちゃんと伝わってたんだな。」
二人、亡くなった娘に思いを馳せて言葉がでなかった。
「高村くん…ひかりちゃんはちゃんと私達のことを見守ってくれてるんだね。」
「俺もひかりに会いたかったな。」
寂しそうに眉を下げながら私を抱き締める高村くん
彼の気持ちが伝わって胸がキュッっと締め付けられた。
「俺たちの失った子は優しい子だな。
目に見えなくても、俺たちの子は二人。大事にしような。」
「うん。」
うなずく私の髪を優しくなでてくれた。
どこに行くのも一緒で高村くんに大事に守らて生まれた子はあかりと名付けた。
高村くんの溺愛ぶりは言うまでもない。彼は出産前後は実家に寝泊まりし、時間がかかるのに実家から仕事に通ってくれた。
休みの日はあかりの子育てを一緒にしてくれた。
私が意識不明から目覚めて、亡くなるまで仕事以外で彼から離れたことはなかった。
仕事も家に帰れるのが遅くならないように選んでいるようで
彼がいない夜は1日も無かった。
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