第1章

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彼が亡くなったのは告知から3ヶ月たった頃だった。 日毎に顔色が悪くなり、痩せていく高村くん その小さくなっていく背中を見ながら悲しくて切なくて涙が込み上げるのを必死で耐えて笑顔を作った。 辛いのは彼だ、私じゃない きっと体も辛いし一人消えていく恐怖や私たちを残していく悔しさと闘っている筈だ。 けれど、そんな姿を1つも見せないで小さい幸せを見つけては私に教えてくれる。 その顔はいつも笑顔で そんな彼に泣き顔なんて見せられない。 そばで私の出来る限り食欲のない彼に食べやすい料理を作り、彼がしたいことを一緒にした。 庭に花壇を作り芽が出たと喜び、花が一つ咲いたと目を輝かす彼の側で一緒に喜んだ。 いつ来るか分からない別れに怯えながらも、穏やかで温かくて満ち足りた日々。 きっと体が辛かったり怠かったり、痛みが出たりしたのだろうけれど、一度も辛そうなところを見せなかった。 ただ、彼の動きがゆっくりになったのは感じていて、それに合わせるようにゆっくり歩いた。
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