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二、旅人、カドル
白い谷に一人の旅人が訪れた。旅人は自分の背丈ほどの若いドラゴンを連れて、埃まみれのフード付きのマントに頭までスッポリとくるまれていた。ドラゴンはキョロキョロしながら旅人の横に連れ添い、物珍しさからか、ガヤガヤと大勢の大人や子供がその後ろに従っていた。今では、ドラゴンを連れるということがなくなっていたのだ。旅人は一軒の家の前に立ち止まると懐かしそうにドアを叩いた。大きく、重たいドアが開き、カイルが顔を出した。旅人は深々とお辞儀をしてフードを取った。旅人の白髪と深い皺で印象付けられたその顔には憂愁の色が浮かんでいた。長い旅路の果てに、様々な困難と悲惨を経験してきた顔だった。カイルがビックリしていると、旅人は優しく微笑んで、尋ねた。
「すまない。少々、驚かせてしまったようだね。アムラールは在宅かね?」
「ええ、おります。失礼ですが?」
「ああ、私の名はカドル。古い友人が訪ねてきたと伝えてくれるか?」
「分かりました、カドルさん。それでは少しお待ちください」
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