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「よろしくね」
「よーし、山本は…んじゃああの席座ってな。そう、一番後ろの空いてるとこ。渡辺の隣な。」
担任が山本さんを案内したのは、私の隣だった。
空いている席は私の隣しかないのだから、まあそうなるだろうなとは思っていたけれど。教室中の視線がこちら側に向いて居心地が悪い。意味ありげな沈黙が痛い。
(どうせ皆、〝渡辺の隣なんて可哀想〟とか思っているんだろうな。)
(転校生もこの沈黙で、私のクラスでの立ち位置に気づいただろうな。)
悲観的な感情に自分が支配されていく感覚に、体が脱力していく。そして、
(お願いだから、皆、私に関わらないで!)
と強く念じて顔を伏せた。長い前髪が視界をシャットアウトしてくれて、幾分か心が和らいだ。
その後、
「山本ォ、一番後ろだからって気ィ抜いて寝んなよー」
という担任の言葉に教室の沈黙は破れ、笑いに包まれたが、私は顔を伏せたまま一笑もしなかった。
パタ、パタと、靴音が近くなる。
「隣同士宜しく!」
という転校生の明朗な声に、私は顔も上げず小さく頷いた。
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