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ホームルームが終わり、10分休みになった。
私はいつものように自由帳を取り出して、絵を描こうとしていた。
…それなのに。
「ねえ、宜しくってば。聞こえてる?宜しくー!」
山本美奈子、とてつもなくしつこい。私さっきから何度も頷いているのに。しかも何だか次第に距離が近くなっている気配がする。今に至っては耳元に吐息さえ感じる…。
「渡辺さん、宜しく…」
「ああもう聞こえてます!よろしくお願いします!!」
耳元に手を添えて囁かれたのが不快すぎて、彼女の手を振り払った。近くで見る山本さんの顔は、やはり美しかった。
「あ、やっとこっち向いてくれた!隣同士なんだから仲良くしてよ。寂しいじゃん。」
キラキラとした純粋な瞳で見つめられ、手を差し伸べられて、困ってしまった。
反応の薄い私を馬鹿にして楽しんでいるのかと思ったけれど、見た感じ、そうでも無さそうだ。けれどもまさか、本当にただ私のような人間と友達になりたいだなんて事は無いだろう。私と友達になったところで山本さん側にメリットなどひとつも無いのだから。必ず裏があるに決まっている。ならば何が目的なのだろうか。戸惑いつつも、彼女の手を握る。
「お、やった渡辺さんとの親愛度1上がり!あ、ねえ、そうだ。後で学校案内してよ。私まだ全然わかんないんだわ。」
私は勢いに押されて頷いてしまった。山本さんのような「あちら側」の人間とは関わらないことが一番のの平安への道だというのに。
そして結局、私は放課後、山本さんに学校を案内することを約束してしまった。
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