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今のところ優介に彼女ができた話しは聞いたことがない。が、彼はモテる。
端正な顔立ちと日本人っぽくない容姿で女子ウケが良いのだ。
彩菜自身も過去に何度か優介と知らない女の子が一緒にいる場面を目撃して、ひやっとした思いを経験している。
それと優介には独特な雰囲気があり、そんなミステリアスな部分もきっと女子には人気があるのだろう。幼なじみの自分でさえ、たまに優介が何を考えているのかわからない時がある。
「そう言えば……」
優介のことを考えていると、久しぶりに蔵に入ったせいもあるのか、この前彼がふと口にしたことを彩菜は思い出した。
それは薬学の歴史についての授業終わり、隣で一緒に講義を受けていた優介が言った言葉。
――あの蔵には、まだ薬箪笥があるの?――
その言葉を聞いた私は、少し驚いた口調で思わず「え?」と聞き返してしまった。まさか優介の口から、あの薬箪笥の事を聞くとは思わなかったからだ。
あの蔵は、基本的に家族の人間しか入ることができない。
それと気になったのが、優介が蔵に入った時、その場に私も一緒にいたと言うのだ。でも自分にはそんな記憶が一切なかった。
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