消失

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 ちょうど三人分空いた座席に腰を下ろした康平が言った。 「だって……その方が康平も喜んでくれるかなって思ったもん」 「まあ、康平にはバレたけどね」  いたずらにクスッと笑う優介に、彩菜は「うぅ……」と頭を抱えて再び嘆く。それを見て康平が「気にし過ぎだって」とけらけらと笑った。  予定では総合病院前のバス停で降りるところだったが、二人とも彩菜の家まで付いて行くことになったので、三人は途中でバスを降りた。  家まで向かう途中、消沈している彩菜の気持ちとは対照的に、からっと晴れた空の下では蝉の鳴き声が元気よく響いていた。 「久しぶりに来たけど、相変わらずでけー家だな」  玄関前で康平が右手でひさしを作って、屋根を見上げながら言った。昔はよく康平と優介が遊びに来ていたのだが、二人が揃って家に来るのはかなり久しぶりだった。 「すぐに取ってくるから、ちょっと待ってて」  彩菜はそう言って玄関の引き戸を開けて中に入ると、ちょうど入れ違いに外に出ようとしていた祖母とばったり出くわした。 「おや、彩菜。ちょうど良かった……」  少し困ったような表情を浮かべる祖母を見て、「どうしたの?」と彩菜も心配そうに声をかける。     
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