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カーナは地上まであと少しのところまで降りると、地上から見えるか見えないかの辺りの枝にとまり葉が生い茂っているところにしゃがんで少し身を隠しながら地上の様子を伺った。
普通の聴覚で足音が聞こえるところまで盗賊たちは迫っていた。
(やっぱり全員獣に乗ってるな)
一瞬見えた映像の中に、獣の中でも足の速さに定評のある獣が人を乗せて走っている姿があった。
虎のような姿のもの、鳥の中で最も足が速いと言われる駝鳥、そして音からして荷車を引いている馬もいるようだった。
荷車の中は恐らく檻。
鉄のこすれる音が頻繁に聞こえていた。
盗賊のことだから恐らく痛めつけて強引に命令を聞くよう躾けているのだろう。
鞭のしなる音と、動物たちの苦痛の悲鳴が胸糞悪いくらい人気のない砂漠に響いていた。
「ハレン、大丈夫?」
『嫌な予感してたから木の耳栓つけてて何も聞こえないよ』
「よかった。そのままの方がいいよ」
『うわー、当たってほしくない予想が当たっちゃったんだなぁ。わかった。カーナも気をつけて』
「うん、ありがとう」
特異種の生き物だからか、鼻も耳も他の動物に比べてかなり優れているハレン。
聞きたくない音も、嗅ぎたくない匂いも、嫌でも敏感に嗅ぎつけてしまうし、聞こえてしまう。
そんなハレンの為に耳栓と匂いを誤魔化すアロマを木の葉っぱの裏の所々にいつも取れるよう隠してある。
モノ作りは趣味程度には作れる自分でよかったと、カーナはつくづく思うのだった。
そうこうする内に、盗賊たちは砂埃を巻きあげて木の周りに到着していた。
(やはり目標はここか)
カーナは腰の双剣に手をかけた。
あれだけの優れた獣を強引だとしても手懐けている盗賊だ。
腕も頭も、今までカーナの魔法に呆気なく敗れていった盗賊たちの比ではないくらい、いいだろう。
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