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男はそれを一目見ると、安堵したかのようにほっと息を吐いた。 やっと辿り着いたのだ。安心して空き巣に入れる家に。 この洋館は、どこぞの大富豪の持ち物らしい。家に入りきらなくなった金品を収納する為に建てた、謂わば倉庫のようなものだ。なので勿論、誰も住んでいない。その上、こんな辺鄙な場所に建っているので人目にもつきにくい。 こんなに泥棒に向いていて尚且つ、儲かる物件はそうそう無い。十時間かけて歩いてでも来たくなる訳だ。 下調べした甲斐があったなぁ。そう安堵しながら、男は早速作業に取り掛かる。まずは玄関の鍵のピッキングだ。窓ガラスを割って入っても良いが、それだと空き巣が侵入した事が直ぐにバレてしまう。発見は出来るだけ遅らせた方が得だ。 男は慣れた手つきで鍵穴にワイヤーを突っ込んだ。そのワイヤーを慎重にクルクルと動かすと、ものの数十秒で鍵は開けられた。 やけに簡単だと思えば、どうやら古いタイプの鍵穴だったらしい。しかもダブルロックすらしていない。 大富豪の癖に、随分と防犯に無頓着なのだな。まぁお陰で助かったけど。 男は少し不思議には思ったものの、あまり疑問には思わなかった。 だから、何の躊躇いもなく扉を開けた。 ────それがいけなかったらしい。 「誰だ!?」     
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