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「まるで、鬼ごっこですな」
木場のオッサンは、こんな事態なのに呑気にそう言った。
「鬼が増える鬼ごっこなんて聞いた事も……」
「有りますよ」
「へっ?」
「『増やし鬼』って言ってね。別名『ゾンビ鬼』」
「やめて下さい。洒落にならない」
「この『ゾンビ鬼』の面白い所は、鬼が複数になる事で、鬼の側にも戦略が……」
そう言って、木場のオッサンは、教室の1つのドアを開けた。
「何してるんですか、危険じゃ……」
「いや、このクラスの生徒は、騒ぎが起きた時は、体育の授業だった筈なんで、ここには、多分、誰も居ませんよ。ボクはベランダに出て飛び降ります。先生はどうします?」
「待って下さい、どうしますも何も……」
「でも、2階だから、飛び降りても、動けない怪我をする確率は小さいし、ベランダから飛び降りた方が、階段を降りるよりも、ボクが通勤に使ってるスクーターまでの距離は小さい」
「すいません、バス通勤なんで」
「階段を使うの?」
「ええ……」
「じゃ、気を付けて」
木場のオッサンは、その教室に入った。俺は、階段の方にかける。
しかし、廊下の階段を挟んだ反対側からもゾンビが来る。俺は急いで階段を降り……うわぁ、階段の上から も来てやがる。
「うわぁぁぁぁ……」
やった、階段を降りきった。外まで、あと少し……いや待て……。
『ゾンビに見えるからと言って、知能が無いとは限らない』
『鬼が複数の「鬼ごっこ」では鬼の側にも「戦略」が生まれる』
木場のオッサン、この可能性を予想してやがったのか……。だから、「もしゾンビに知能が有った場合でも裏をかける可能性が高い」逃走経路を選んだのか。
俺の目の前には待ち構えていたゾンビの大群が居て、後方からも階段から降りてくるゾンビの大群が迫っていた。
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