プロローグ

2/10
109人が本棚に入れています
本棚に追加
/291ページ
 酷い気持ちの悪さへと移ろって行く。 「……っ。(これ、は不味い。吐きそうだ。)」  強烈な吐き気を感じ。自然と口に手を()え、あるのか無いのか  定かではない出口を探してしまう。こんな状況だ、此処が何処かは  知らないが、此処で吐いてしまっても仕方が無い。と言う意識は  私から完全に抜け落ち、『吐くなら外に出なくては。』と。  静かにパニックを引き起こしながら必死に辺りを見渡す。 「!」  目が暗闇に慣れたお陰だろうか。先程は気が付かなかったが、  (あわ)い光を彼方(かなた)に見付ける事が出来た。  出口。かどうかは分からないが、あの光以外に頼りは無い。  兎も角にも遠くに見えたあの出口らしき光源に近付こう。  そう考えて一歩を踏み出す、と。“パシャリ”等と言う様な  音と共に、何かを蹴ったらしい感触が足先から伝わって来た。 「ヴ?!(な、何だ?!)」  私は漠然と、自分は何も無い空間に居ると思っていた。だが、  この暗闇には物が置いてあるのかも知れない。その事実は驚きで、  口を抑えながらも小さく驚きの声を上げてしまう程だ。  まあ。今のでは(うめ)き声と言った方が良いか……。  じゃない、何かが私の足元にはあるらしいんだ。     
/291ページ

最初のコメントを投稿しよう!