プロローグ

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 そして───扉らしき物へ綺麗にショルダータックルを決めた訳だ。  “バガンッ!”  扉は少し開いていたのか、或いは此方の力が強かったか。  そんな大きな音を立てては弾かれ。私は気合で絞り出した勢いを  殺すに殺せず、そのまま外へと縺れ出る。  扉から数歩程外へ飛び出し、体勢を繕うと頑張るが、  奇跡はさっきので売り切れてしまったらしい。  外には雨でぬかるんだ地面が広がり、案の定泥濘に足を取られては、  私はうつ伏せで地面へと倒れ込む。腹に受けた衝撃は予想以上で、  それまで留めていたモノを吐き出すには十分過ぎた。 「ふぎょ!?」  背中に降り注ぐ雨の圧を感じながら。両手を口に当てたままで  吐き出されたソレに、私は顔面を埋める。  顔に不快極まる生暖かさを感じつつ、ゆっくりと立ち上がり。  そして。今だ雨降り頻る天を仰ぎ。 「………。」  冷たい雨粒が顔へと降り注ぐ感覚。  涙は出ない、溜息も出ない。ただただ、小さく、小刻みに。  私は震えて居た─── 「………………。」  ───暫く。天の恵みたる雨を顔から全身に受け。  顔にあった不快感が消えて来た頃、ようやく目を開く事が出来た。  開いた目には雨粒落ち、見上げていた空は暗い。     
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