プロローグ

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 これも吐いたお陰……。そう思い何気なく両手を見遣ると。 「これ、は?」  自分の両手には黒い革のグローブ。それに驚いた私は  腕を下ろし、自身の首から下を見下ろす。  自分が何を身に着けているかを確認すれば。  腹の辺りをベルトで止めた黒のロングコートに、  コートの下には黒シャツ、足には黒のブーツと。  全体的に雨と泥にまみれて酷い有様ではあったが、  何を身に着けているかは確認出来た。  全身黒ずくめのこの服装。これはネットゲームの中で  私が所有する『特殊なキャラクター』の固定装備で。  そこから導き出される結論は一つ。 「ああ。つまり此処は仮想現実(ゲームの中)と言う訳か。  しかし仮想現実で寝落ちしたのか? 私が?」  本当にそうだろうか? そんな不安が胸をざわつかせ、  “ドクン”と一つ。心臓が嫌な鼓動を刻む。 「……。(おかしい。此処が私の知っている仮想現実の中なら、  明らかに()()()()()()()はおかしい。)」  そう、おかしいのだ。吐き気を覚えるのもそうだが、 『ゲームの中で嘔吐』するキャラクターなど存在するはずがない。  もしもプレイ中に吐き気を覚え、吐くとしても強制ログアウト     
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