109人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
───ひんやりとした感触を頬に感じ、男の意識が覚醒する。
ふと気が付けば。心地よい冷たさを頬に感じる。感触から思うに、
どうやら自分は床に倒れて居るらしい。何故僕は床なんかに
倒れているんだ? 理由を思い出そうと試みるけど、寝起きで頭が
ぼんやりとしている所為か上手く思い出せない。
それでもと少し頑張っては見るけど。
「(……だめだ。)」
意識が記憶を手繰れる程には強く保てない。一旦倒れた理由を
思い出すのは後にして、起き上がって現状を把握した方が早いかな?
そう考え。寝転んで居たらしい自分の上体を起こし、立ち上がって
辺りを見渡す。だけど。
「(これは……困ったね……。)」
立ち上がった体勢のままで固まってしまう。いや、固まる他無い。
見渡した辺りは暗く。余りの暗さに一瞬、瞼を開け忘れたかと
錯覚する程の暗さだ。
辺りを見渡そうにもこれでは何も見えない。自分の体
ですらよく見えないのだから。さてどうしたものかと棒立ちで居ると。
急に立った所為だろうか、不意に目眩を感じた。僕が目眩を
意識した途端、目眩は酷い立ちくらみの様な。
或いは誰かに頭を掴まれ、遠慮も無しに揺さぶられている様な。
最初のコメントを投稿しよう!