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「たまたまよ。どこへ行く?」
「指輪の店をネットで色々調べてみたんだ。行ってみよう」
沙也加は西林さんの優しさが心地良かった。
「そんなに高い指輪じゃなくて良いのよ」
思ってもいない言葉がでた。
「そんな訳にはいかないよ。二人の記念指輪だ」
西林さんは沙也加がお金が目当てで言った事に何の疑いも持っていない。沙也加は指輪が欲しいと言った事に罪悪感を覚えた。
「何でも良いのよ。安物の玩具の指輪を買ってくれる?」
「そんな物でいいの?」
「大事にするわ」
「沙也加ちゃんは意外と謙虚なんだね」
西林さんはそう言うと、有名なブランドの店に案内してくれた。
「調べた結果、ここの店が良いと思ってね。嫌いじゃなければ好きな指輪を選ぶといいよ」
「本当にいいの?誰にでもこんなに親切なの?」
「沙也加ちゃんだけだよ。産まれて初めてだ。指輪をプレゼントするなんて」
二人はその後ランチを食べてから映画を見たりしてデートを楽しんだ。
「遅くなってからでも良いのなら夕飯も奢るよ」
「本当?私、焼肉が食べたいわ。確か安くて美味しいお店が近くにあるのよ」
「お家の人に連絡しなくて大丈夫?」
「うん。私一人暮らしだもの。それに母親は私の事なんて心配しないし」
「そうかなー。こんなに可愛い娘がいるのに」
程なくして二人は焼肉屋さんについた。すると
「あれっ?弘美ちゃん。どうしたの?」
偶然にも塚越さんが声をかけてきた。
「弘美は寝ているわよ。私は沙也加」
「沙也加ちゃんか。なんだかややこしいな。一人?」
「彼氏と一緒よ」
そう言って、指輪をはめた手を塚越の目の前に持っていった。
「初めまして。西林と申します。沙也加ちゃんのお知り合いの方ですか?」
「知り合いの彼氏よ。ねえ。塚越さん」
塚越はあまりの驚きとショックで何も言えなくなってしまった。
「それじゃあ。またね、塚越さん」
沙也加は西林と仲良く腕を組んだ。
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