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「そうはさせないわよ。塚越さん」 弘美の口調が変わった。沙也加が現れたのだ。 「沙也加ちゃんだね。弘美ちゃんが困っているよ。弘美ちゃんと変わってくれないか?」 「病院に行かないって約束したらね」 「それは無理だよ」 「私がいないと弘美だって困るのよ」 「何故?どうして弘美ちゃんが困るの?」 「母親のお金の催促、いつも私が払っていたのよ」 「・・・・」 「もう払う気ないけどね。でも弘美はいい子だから払ってしまうわ。そんなの可哀想じゃない」 「沙也加ちゃんが居なくなる訳ではないと思うよ。二つの人格が一つになるんだ」 「そんなの信じられないわ」 「とにかく相談だけでもいいから病院に行ってみよう」 「解ったわ。相談だけね」 そう言うと、沙也加は俯いた。 「あれっ。今、何の話していたかしら」 「弘美ちゃん、明日二人で病院へ行こう。いや、3人か」 そう言うと、塚越は深く考えこんだ。 メンタルクリニックへは朝一番に電話をして予約をいれておいた。 塚越さんと待ち合わせをしてから予約の時間に病院へ行くと、待合室は人で一杯であった。 「混んでいるわね」 「ストレス社会だからね」 「私もストレス?」 「ここに来る前にネットで少し調べてみたのだけれど、小さな頃の親からの虐待経験がある人がかかりやすいようだ」 弘美は口を噤んだ。虐待経験といえるのか母親がスナックの男達を家に連れ込んで、情事を重ねるのを見させられてきているし、今でも母は弘美に風俗で働くように行ってくる。でもそんな事、塚越さんに話してしまっても良いのだろうか。
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