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「僕は運転があるから飲まないけれど、食前にワインでも飲む?」
「そうね。でも一人で飲んだら悪いみたい」
「弘美ちゃんの好きにするといい」
「では、少しだけ白ワインを貰おうかしら」
二人は乾杯をする。楽しく会話しながらグラスの半分位飲んだ時であった。
「誰?貴方?」
弘美の声の調子が変わった。
「誰って。弘美ちゃんどうしたの?」
「私は沙也加よ」
「沙也加?」
「ねえ。私酔っちゃたみたい。今晩はどうするの?」
「今晩?」
「酔わせておいて、そのまま家に送り届けるの?それだけ?ねえ、何か目的があるのでしょう」
「・・・・・」
「男なんて皆同じよ。この後どこに行く?」
「弘美ちゃん、どうしたのか解らないけど、君の好きな所に行こうよ。さっき美術館に行きたいって言ってなかった?」
「美術館なんて興味ないわ。それに私は弘美じゃないのよ。沙也加って言ったでしょう」
「そうか。酔ってふざけているんだね。じゃあどこへ行く?」
「もっとお酒を飲ませてほしいわ」
二人は話合った末、レストランを出て、車に乗りコンビニに向かった。お酒を買う為である。ビール3本、ワインを2本買った後は何処で飲むかまた話合いになった。
「せっかく軽井沢まで来たんだ。ピクニック気分で自然の中で飲んだらどう?」
「それじゃあつまらないわ」
「じゃあどうする?車の中で飲むつもり?」
「軽井沢にはホテルがあるでしょう」
「ホテル?ホテルに泊まりたいの?それは今度にしようよ」
「何故?」
「ホテルに泊まるつもり?」
「嫌ならいいの。つまらない男ね」
二人は押し黙った。
すると今まで元気の良かった沙也加が突然俯いた。
「どうしたの?気分でも悪くなった?」
どうやら眠ってしまったようである。きっと酔っぱらってしまったのだろう。塚越はお昼にワインを進めた事を後悔した。それにしても弘美ちゃんこんなにお酒弱かったかな?疲れていたのかもしれない。幾分かの疑問を持ちながらも車でマンションまで送り届ける事にした。
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