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月曜日の朝、目を覚ました弘美は昨日の記憶が無い事に気が付いた。お昼にワインをすすめられて飲んだのは覚えているが、その後の記憶が無い。酔ってしまったのか?あわててメールを打つ。
『塚越さん。昨日は有難う。とても楽しかったわ。私お昼のワインで酔ってしまったみたい。迷惑はかけなかったかしら。恥ずかしい話、あまり覚えていないの』
返信はすぐに返ってきた。
『こちらこそ有難う。疲れていたみたいだったね。マンションまでぐっすり眠っていたよ。また誘ってもいいかな?今度は近場にしよう』
良かった。迷惑はかけなかったようである。弘美は安心した。スマホをテーブルにおこうとした時、電話の着信音がなった。
母からだ。どうしよう。でたくない。しかし、でない訳にはいかないだろう。マンションに来られたら困ってしまう。
「はい。お母さん?どうしたの。私これから仕事なの」
「解っているわよ。あのね、今月ちょっとお金が足りないの。振り込んでおいてくれないかしら?」
「そう毎月毎月では私も困るわ。お店が暇なの?」
母は弘美が小さな頃からスナックを経営している。毎月赤字だと言っては弘美にお金を強請ってくるのであった。
「お店の事は関係ないでしょう?!。誰のおかげで生きていられると思っているの?親に感謝しなさいよ!」
母がヒステリックに叫ぶと弘美はそれ以上何も言えなくなってしまう。幼い時から母のヒステリーに悩まされてきたからであろう。
突然、財布に入っていた身に覚えのないお金の事が頭に浮かぶ。
「少しで良いのなら何とかなるわ。でも私も普通の事務員だし、本当にお金が無いのよ」
「まったく。今回は少しで何とかなるけど、来月もお願いね。事務員なんかやめて風俗ででも働けばいいのに」
母がつんけんした口調で答える。仕方がない。今更何を言い返しても変わらない。母はこんな性格なのだ。それより、母に塚越さんの事がバレたら良いカモにされてしまう。すでに過去に痛い目にあっているのだ。その事だけは避けなければいけない。
「仕事だから電話を切ってもいいかしら?」
「今日中に頼むわね!」
プツン
電話は勝手に切られた。取り合えず、財布に入っていた3万円を入金しておこう。
仕事に急がなければ。弘美は急いでマンションをでた。
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