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一週間は何事もなく過ぎていった。今日は週末の金曜日である。先週歓送迎会をやったばかりだと言うのに、今日は女子会をやると言う。まあ、早めに切り上げて家で読みかけの小説でも読もう。
弘美はそう考えると約束のイタリアンレストランへ向かった。
「あっ。弘美ちゃん。こっちこっち」
山沢先輩が大きなテーブル席に座って、空いている席を指さす。
「遅かったわね。皆もう来ているわよ。何を飲む?」
「私は食後に紅茶を頂くわ」
「さみしい事を言わないで。今日は私の誕生日でもあるのよ。乾杯しましょうよ」
弘美は、最近記憶を無くす事があるので断りたかったが、勝手にビールを注文されてしまった。
(一杯位なら大丈夫かな)
弘美はビールを口にした。空いているお腹が最初は冷たくなるが、やがて火がともったように温かくなる。アルコールの温もりだろう。弘美は寂しかった心が癒されるような不思議な気分に陥る。
一杯飲み終わると(大丈夫だ。まだしっかりしている)そう思い、グラスワインを注文した。
あの日は特別疲れていたに違いない。それに塚越さんの口ぶりではただ寝てしまっただけで、迷惑などかけていないみたいだ。
「もう一杯頂こうかしら」
弘美はそのまま2、3時間程ずるずると飲み続けてしまった。
「何なの?この服装は?」
沙也加は、弘美が女子会をやっていたレストランの近くにある居酒屋で一人事を言った。
「これじゃあ、男が寄ってこないわよ」
自分の服装をまじまじと見つめる。カジュアルオフィスと言えば聞こえがいいが、ワイシャツにパンツ。カーディガンといった服装である。
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