第一章、おばちゃんは魔法少女になってしまった

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「いいから出てってくれよ! アニメ終わったら自分で掃除機かけるから」 「アンタこんなこと言って一度もかけてないでしょ」 それを証明するかのように掃除機の「ゴミ発見」のランプが赤くこうこうと輝いている。数週間前にも同じなやり取りをしたのだが「自分でやる」と言う言葉を信じてあたしは息子の部屋の掃除をしなかった。こうして裏切られた回数は数え切れない。世間のお母さん方も似たような経験をしているんだろうな。  あたしは掃除機を切ってテレビに目をやった。ピンク色のフリフリの衣装を身にまとった少女が空を身一つで飛び回りステッキを振り回してそこから飛び出したハートを巨大な化け物に当てているシーンが映った。あたしはそれを見て激しい違和感を覚えた。 「これ、魔女っ子ものよね?」 「うん、そうだけど。掃除終わったんだからさっさと出て行けよ」 「お母さんが子供の頃にはご町内の問題を解決するほのぼのした「まんが」だと思ったんだけど…… あの黒いのって何かしら? ご町内の敵?」 「あれは世界を滅ぼそうとする敵! 人間に取り憑いて悪魔みたいなのにするんだ」 「え? 世界を滅ぼすって何よ。今の魔女っ子ってヒーローみたいな事するの?」 「てか今は魔女っ子って言わない。魔法少女って言うんだ。てか今の魔法少女みんな悪いやつと戦うストーリーだよ」
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