第二章、この町の平和の為に

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 更に翌日の事、事態は急転直下する。新聞の三面記事に「中学生4人、シンナーで逮捕」の記事が舞い踊った。息子から聞く話によると、レインのクラスのグループチャットを新聞社に提出し、密告(チク)った奴がいてそこから取材を受けたうちの市の警察署が4人をシンナー所持で逮捕せざるを得なくなったとのことだった。使った時点で「所持」していたと言うことになり劇物取締法が適用されるらしいがこの辺りはよくわからない。そのうちの一人が警察署長の息子である事も密告(チク)られ、それがインターネットで拡散されてしまった。未成年である故に名前が公表される事は無かったが今は科学万能の現代、インターネット上では公然の事実になってしまった。流石にこの事実を見過ごせなかった警察庁はその日の内に伊藤警察署長を更迭。これ以降伊藤4家族は息子たちの療養も兼ねて暫く家を空けることになった…… 連日家の前に集まる記者たちの追及回避が主な理由と思われる。 しかし、あたしの魔法がシンナーの幻覚扱いとは…… 助かったと言うべきなんだろうか。  ここからは後の話であるが、数カ月後、ほとぼりが冷めた辺りで伊藤4家族は戻ってきた。4人も正常に戻っていた。あたしの魔法には制限時間があるのか無意識に解除したのか…… それはあたしにも分からない。それはともかくとしてあれだけのことをしてきたのにどんな面の皮の厚さだろうか。それはともかく、彼らが戻ってくる頃には伊藤村の周りにはハッピースマイル住宅街と言うものが出来ており「余所者」に周りを囲まれるようになっていた。この状態でも周りの人間に対して「余所者」と偉そうにはするものの「余所者」の方が圧倒的に数が多い故にその態度も長くは続かなかった。この伊藤4家族以外の伊藤家はこれが分かっていたので「余所者」扱いせずにハッピースマイル住宅街の人間と良好に接していくことにしていた。伊藤4家族が帰って来てから1週間も経つ頃には彼らは別人のように大人しくなっていたと言う……  
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