中年魔法少女おばちゃん

第一章、おばちゃんは魔法少女になってしまった

　驚天動地だった。あたしが昔観ていた魔女っ子が出てくるアニメ（まんがじゃないの？）はある日突然人間界に魔女っ子が降りてきてご町内、それも本当に近辺の問題を解決する話だけを延々と続けて最後は魔法界に帰って行くと言うものだと思っていたのに……
今の魔女っ子は敵を倒すことが目標になっている……　そりゃあご町内の問題を解決するだけの話に混じって悪い魔女っ子や地上げ屋さんとかと戦う話はあったけど……
「その、今の言い方をすると魔法少女？　って悪魔とかと戦うものじゃないと思うんだけどな……　お母さん」
「仕方ないじゃん、戦うものがウケちゃったんだから！」
「あたしが観てた時は魔法使いのお婆さんがシンデレラを助けるような話だったんだけどな」
「もういいから出てってよ！」
「ならせめてゴミ箱の中のゴミ袋の交換だけでも」
　それを言った瞬間に息子は般若の表情になった。何かあるのだろうか。数年前からゴミ袋の交換だけは自分でやっているので心配はないかも知れない。
あたしは突き出されるように部屋を追い出された。閉じられた扉の向こうから歌が聞こえてきた。エンディングテーマでも始まったのだろうか。やけにドタドタ揺れる……　まさか一緒に踊っているのでは無いだろうか。