第三章、悦びの歌

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「フキちゃん、今日も残業お願い出来る?」 最近、あたしは店長に言われて連日残業をしている。何でも青果のアルバイト君が今日も来れなくなったらしい。ここ3日間連続である。青果のアルバイト君の宍戸一郎(ししど いちろう)君がずっとアルバイトに来ないと言うのだ。本人と連絡は取れるものの「クラス行事で忙しくて来れない」との事であった。彼は高校の許可証付きでアルバイトをしていたところ家は貧しいとの事であったがクラス行事を優先出来るところまだ余裕があるのだろう。この前はどうでもいい事と思っていたが、あたしにお鉢が回ってくるせいで労働時間はみるみると増えていく。最近になって夫から「お前、扶養控除大丈夫か? 最近夜遅くまで働いてるようだけど」と、愚痴られてしまった。こうして愚痴られた事で「クラス行事を優先するぐらい生活に余裕あるならバイト辞めたら?」と、彼に言いたい気分になった。  仕事を終えた後、休憩室で帰り支度をしていると、スーパー併設のたこ焼き屋の主人がいくつもビニール袋を持って来た。 「皆さん、今日はたこ焼きを作りすぎてしまったので是非持って行って下さい」 こうしてタダで配るぐらいに作る前にもう少し考えて作ったらどうかと思ったが、タダでたこ焼きが貰えるのは悪いものでは無いので一舟貰う事にした。帰ってレンジでチンすれば夫の酒のツマミぐらいにはなるだろう。
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