第三章、悦びの歌

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あたしからは何とも言えないけどクラス行事には協力するのが筋だと思うな。 「僕、学校の許可証付きでバイトやってるの皆知ってるから気を使って免除されるって思うじゃないですか」 「今聞いたように生活が大変だもんね。まあその分、居残り外の練習を頑張るべきね」 「ところがバイトがあるから離脱(ぬけ)ようとする僕に言うんですよ『バイトと合唱コンクールどっちが大事なの!』って」 その答えはゼロコンマ1秒で即座に出る。バイトに決まっている、なぜなら生活がかかっているからだ。当たり前である。 「僕は即座にバイトって答えたんですよ。そうしたら北諏訪が急に泣き出して『何でみんなで一致団結しないの!』ってガラガラ声で叫んで足止めするんですよ」 典型的な女が嫌いな女である。目の前にいたらビンタの一発でも食らわせて黙らせてやりたいものだ。 「結局それに根負けして居残り練習に参加する羽目になってバイトになかなか来れなくなったって訳です。テスト期間でも無いのにこんな事に巻き込まれる意味が分かりませんよ」 遊ぶ金欲しさにアルバイトをしているならこれも通るかも知れないが、家計を支える為にアルバイトをしている少年に対して言っていい事では無い。あたしの心の中に怒りがこみ上げてきた。 「担任の先生は何も言わないの? 先生に相談すれば鶴の一声で終わる問題だと思うんだけどな」 「そうも行かないんですよ……」 一郎は口ごもった。どうしようも無い理由があるようだ。
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