第三章、悦びの歌

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「ほんと、合唱コンクールたるいよね」 「毎日歌ってるのにどうしてカラオケ来てるんだろうな俺ら」 「馬鹿だからじゃね?」 「「「ははは」」」 「そうそう、大学の推薦枠を得るための内申点稼ぐ為に一生懸命やってる奴もいるけどね」 「ああ、隣のクラスの北諏訪だろ? 何が「クラス皆で一つになって合唱コンクール優勝しよう!」だよ! テメーの内申点稼ぐ為だろうがっての!」と、結構ゴツい少年が言う。ハスキー声に混じっての女声のものまねは聞いてて気分が悪い。彼が言っているのは昨日一郎が言っていた北諏訪のことだろうか。 「あいつ五月蝿いんだよなぁ」 「そうそう、あいつのシンパ多いから教室塞いでフケる事も出来やしない」 「これで言い争いになると泣き喚くのが余計にタチ悪い」 「幼稚園の頃は泣けば許されるとかあったけどまさか高校生になってまでガチでやるとはなぁ」 「知ってるか? 1年の時の話」 「何それ」 「1年の時の合唱コンクールの時の話なんだけどさぁ、北諏訪と同じクラスでさぁ、やっぱり今回と同じ様に居残り練習強制させられてたんだよ」 「変わらねえな」 「俺らみたいな普通の生徒だったら問題ないんだけど学校の許可証付きでバイトしてる奴いるじゃん? そいつにまで居残り練習強制するんだよ」 「生活かかってるのに酷くね?」 「そうしたらその期間中バイトに出れなくてクビになったんだよ」 「うっわ最悪」 「で、学費が払えなくなって退学。私立の助成金とかも出ないみたいでさ」 「毎年私立高校の無償化の署名用紙貰ってる現状を考えると省庁が動いてないみたいだな」 「結局合唱コンクールは優勝したんだけどさぁ、さっき言った退学した日ってその日だったんだよ。それから後にやった合唱コンクールの打ち上げの席で北諏訪何言ったと思う?」 「さぁ」
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