第一章、おばちゃんは魔法少女になってしまった

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 部屋を追い出されたあたしは庭の掃き掃除をしていた。春夏秋冬葉っぱが落ちる木があるせいかこの仕事は毎日欠かせない。ある程度葉っぱを纏めてゴミ袋に入れた所で魔法少女のことを考えていた。 「何で魔女っ子が戦う必要があるのかしら。そんなのはヒーローに任せておけばいいのに」 別に男女差別をする意味では無いのだが古き良き魔女っ子作品を観てきたあたしにとっては魔法少女が戦うと言うのは到底納得の出来るものでは無かった。  そんな中、あたしはあの当時の娘時代に意識を移していた。こんな歳のオバちゃんが空想するなんて危ない奴に思われるかもしれないがそこは気にしない。 庭先で泣きじゃくる少女。それを「ふしぎな力」で感じ取ったあたしは魔法の箒に乗ってその少女の前に舞い降りた。 「どうしたの?」 普通なら空から飛んできた怪しい奴を見かけたら真っ先に逃げるところだがここはあたしの空想世界。少女はあたしに泣いている理由を話した。 「ペットの小鳥がいなくなっちゃったの! 助けて!」 普通なら電柱に張り紙をしたり近所を探し回るところだが、空想世界のあたしは魔女っ子、探すのは簡単。 「ラリラハラリラハマジカルサーチでこの子の小鳥をさがーせー」 あたしはハートのステッキを振り回しながら呪文を唱えた。すると家の壁に丸い鏡を思わせる光が現れた。その光の中に少女の小鳥が映し出された。 呪文は適当だ。どこか遠い記憶で魔女っ子が使っていた呪文だとは思うが、どの魔女っ子が使っていたのかは思い出せない。 「おーちゃん!」 その小鳥はセキセイインコだった。おーちゃんと呼ばれるそのセキセイインコは電線の上で雀と一緒に何やらピーチクパーチクと歌っていた。あたしの空想世界ではセキセイインコと雀が電線の上で仲良くしているものだ。現実世界の生態なんかに興味は無い。 そのピーチクパーチクと歌う合唱会に割り込むように目つきの鋭いカラスが現れた。普通ならあたしのような魔女っ子に使役するカラスであるが、主婦になってゴミ捨てをするようになり燃えるゴミの袋を破って中の生ゴミを食い散らかされて困った経験があることから奴のことは嫌いになった。あの黒い体、見てるだけでイライラする。
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