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雀達はカラスの姿を見るなりに尻尾を巻いて逃げ出した。巻くほど大きくも無い尾羽根を巻いて逃げると言うのも変なものである。少女のインコだけは蛇に睨まれたカエルそのままに震え上がり動くことが出来ない。
「駄目! おーちゃんが食べられちゃう!」
あたしは魔法の箒に跨る。そして、少女にサムズアップを見せて笑顔で言った。
「任せて! お姉ちゃんが助けてあげるから!」
あたしはサムズアップから指を鳴らすポーズを取り、鳴らした。あたしの指が鳴る刹那、魔法の箒は凄い勢いで飛び上がった。そして風を切る速度でセキセイインコの元に向かう。
「お願い! 無事でいて」
何処の電線の上も分からないのに飛び上がったことに対しての突っ込みは野暮と言うもの。あたしは魔女っ子! 分かった過程なんてどうでもいい。あたしの空想世界なんだからこれぐらいの容赦はして欲しいものだ。
あっと言う間にセキセイインコの元に辿り着いたあたしは、今まさにカラスが嘴でセキセイインコを突こうとする時、魔法の箒でカラスの頭を殴打してその凶刃を止めた。
「お待ちなさい!」
「何だよ! 久しぶりのメシにありつけるってのに」
カラスが喋りだした。現実のカラスだって喋るのだから気にする必要は無い。あたしの空想世界のカラスは明確な意思を持っていると言うことにしておこう。空想世界に入る時はある程度の現実の軛は解除されるのだ。
「こんな可愛いインコを食べるなんて酷いやつ! この魔女っ子フキちゃんがやっつけてやる!」
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