第一章、おばちゃんは魔法少女になってしまった

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 先程、あたしは魔女っ子が悪と戦うことを否定するようなことを言っていたと思う。だが、これはご町内の問題の解決であって悪との戦いではない。そこのところは注意して頂きたい。 「テケレッツのパー!」 あたしはエルダーサインを宙に描きながら呪文を唱えた。 これも適当な呪文だ。落語の死神で使われている病を治す呪文らしいがよく知らない。死神を吹き飛ばして病気を治しているところ効果はありそうだ。 「カーッ!」 カラスはくるくると回りながら空の彼方に消えていった。空に「キラーン」と言った感じの一つの光が輝く。流石に昭和的な演出かと思ったが、あたしは激動の昭和生まれだ。空の彼方に何かが吹っ飛ぶ演出と言えばそれしか知らない。何か問題があるだろうか。 「さあおーちゃん帰るよ」 あたしはおーちゃんを少女の元に連れて帰った。少女はおーちゃんとの再会を心から喜んだ。それを見てあたしの心も嬉しく感じるのだった。 「魔女のお姉ちゃん、ありがとう」 「あたしは魔女っ子フキエ、困ってる人の味方」 聞かれもしないのに名乗るのもよくある話である。 そしてあたしは居候になっている家に帰るのであった。                               つづく 次回予告 今日も困っている人を助ける魔女っ子フキエ。そんなフキエにクラス一のハンサムの茂木君が告白してきたからまぁ大変! フキエは魔女っ子として困っている人を助ける使命があるのですがまんざらでもない様子! どうなる? どうなる? フキエの恋! 次回、茂木くんは妖怪プリンス ご期待ください。 次回予告の容赦ないネタバレもこの時代のまんがの味である。  あたしが庭でこんな空想世界を作り上げてニヤニヤしている所、夫が庇の下を通りかかった。 「何を笑っているんだ?」 あたしは恥ずかしそうに顔を真っ赤に染め、掃き掃除に入るのであった。
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