2人が本棚に入れています
本棚に追加
第四章 既読無視
5人が揃ったのは何か月ぶりだろう。バンを運転しているのは、辰夫。助手席には、マリコが座る。ふみは仕事があるとかで、今日は来ていない。
久しぶりに会ったせいか、何となくぎごちなく、会話も弾まない。マリコだけがテンション高めで、辰夫にやたらと話しかけている。
車は、紅葉の見える山道を登っていた。次第にすれ違う車の数も少なくなってきた頃、後部座席に座っている3人のうちの美沙子が、真ん中に座る景子に仕掛けた。
「ねえ、景子、アンタさ、なんでこの間私たちのこと無視したのよ」
「この間って?」
「とぼけないでよ。私と美恵が映画館の前にいた時のことよ。アンタ、私たちに気付いたのに無視して前を通り過ぎたじゃない」
「えっ、知らないわよ。そんなこと」
すると、助手席のマリコも参戦する。
「前から思っていたんだけどさ、景子って、私はアンタ達とは違うっていう態度とる時あるよね。偉そうに、ねえ、良枝」
「あるね」
この時、景子は、自分が1対4の状態にあることを知る。今日のドライブ自体、仕組まれていたことを察知する。今のところ、良枝と辰夫は黙っている。
「何も偉そうになんかしていないだろうが」
高校生の頃、不良グル-プに入っていたこともあって、景子はこうした時に、つい昔使っていた言葉が出てしまう。
その時、良枝が無言で景子の頬を叩いた。
「何すんだよ」
「うるせ-」
今度は、美沙子が景子の腹にグ-パンチを食らわした。そこで、車は止められた。辰夫がゆっくり降り、後部座席でうずくまっていた恵子を車から引きずり出す。「おめえよお、なんだってそんなに偉そうなんだよ。仲間を大事にしなかった罰がどんなもんか教えてやろうか。なあ、みんな」
そう言って、恵子を取り囲むみんなの顔を見てにやりとする。
「まずは、おれが一発お見舞いしておくぜ」
最初のコメントを投稿しよう!