2 - Telekinesis

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 答えてくれたと言えど、仔細に教えてくれるとは端から期待していなかったし、そこまで関心もない。  「実験とやらに参加したのも、僕を殺す為か」  「そうよ」  「くだらない」  返答を一蹴すると、興味が失せた様子で突きつけていたナイフを喉元から離し、狩猟ナイフも壁から引き抜いて持ち直した。  束縛から解放された萌葱は血が滲む腹を押さえ、気に食わないとばかりに龍輝を睨みつける。  「情けでもかけたつもり?」  「そんなものかけても何の得もないだろう」  見下すように溜息をつき、穴のあいた天井を見上げた。直接差し込む秋の柔らかな日差しは木々の葉で色を付け、小屋の中を自然に明るくする。その光さえ受け入れない瞳は小屋の中をぐるりと見渡してから、軽く素振りした後の狩猟ナイフを視界に収めた。  萌葱は龍輝の一連の動きを警戒しながら観察し、ポーチから釘を取り出した。  「今私の喉を切らなかった事を後悔するといいわ」  掴めるだけ掴んだ長い釘は萌葱の手を離れ、龍輝を取り囲んで静止する。  一連の動きを気だるそうに見ていた龍輝は深い溜息をついた後、宣言した。  「僕はまだ死なない」  何故なら。  今度は何の合図もなく、取り囲んでいた釘が龍輝めがけて集束した。  釘を撒き散らした音がけたたましく響く。  落ちた釘の間を二人の足が交錯し、いくつかは靴に刺さっている。  「お前には殺意が足りない」  伸ばした龍輝の腕にも釘は刺さっていた。しかし痛みを厭わず突き出した狩猟ナイフは、迷いなく萌葱の腹を深く抉っていた。  「…私では、役不足だったと、いうわけね」  立つ力も気力も奪われた萌葱は膝をつき、前のめりに倒れこんだ。  龍輝には見抜かれていたのだ。力を得た経緯を話した時点で、同じ故郷の人間として見てしまっていた事を。  鬼子に見せたほんの少しの慈悲が、致命的な隙を与えた。  萌葱は顔を上げ、鬼子と呼ばれていた男を見ようとした。しかし顔を見上げるだけの力は入らず、視界には膝から下が収まる。  「そろそろ終わりにさせてもらおうか」  そのままでもじきに死ぬだろうが。  龍輝は狩猟ナイフを握りなおし、痛む腕をかばいながら両手で持ち上げた。
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