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襲いかかる激痛に、少年は地面を転がり悶える。
「所詮、身の程も弁えず、好奇心で死にに来た下衆か」
顔を隠すぼろぼろの包帯の隙間からはみ出している細い髪は、日光の加減によって焦げ茶色に見える。
男はずり落ちたフードを被り直し、少年を一瞥した。
「へ、平気で人を殺せるお前の方が最低じゃないかよ!」
吐き捨てられた男の言葉に、少年はカッとなって叫んだ。思わず出てしまったとはいえ、自分の声が腹に響いて余計に苦しくなる。
直後、痛みで縮こまる少年の背筋が凍った。
「土産に教えてやる。そうやって喚く奴ほどどういう類の人間なのか」
少年の一言が琴線に触れたのか、表情が見えなくても伝わる程の、黒く鋭い怒りが男の目に宿る。
「な、なんだよ…」
なおも少年は虚勢を張ろうとするが、目だけで射殺されそうな恐怖に顔を上げる事が出来ない。
顔を横に向け、完全に視界から外しているはずなのに、澱んだ瞳が脳裏に焼き付いて突き刺さる。
「…そうやってわめく奴ほど、より下衆で最低な生物だって事だ」
この男の怒りを買ってしまった。少年は初めて、自分の行動を後悔した。
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