1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
僕に渡されたのは、宝石にしてはかなり大きな赤い石だった。
「見ての通りルビーだが?」
「そんな高価なもの...お借りできません!」
「ああ、"君の世界では"高価なんだろうね?」
(この人...僕が別のところから来たって事...)
「...いつから知っていたんです?」
彼女は毅然とした態度で「ティナが連れて来た時からだ」と告げた。それに同意するようにティナも二度首を縦に動かす。
「ごく稀にね、迷い込んでくるんだよ。違うオーラを纏った異界の人間がね...。 それが君だったのさ。
君に貸したこの宝石は、持つ者の力量によって塵にも宝にもなる。」
状況が飲み込めずにぼーっと師匠の話を聞いていると、ティナが衣装ケースから男性用の服を僕に渡してくれた。
「異界の人間は闇の商人に狙われやすいですからね。危ないので、これに着替えて行ってください」
ティナが渡したのは、全身革でできた防具だった。いかにも旅の始まりを感じされる衣装だ。
「ああ、ありがとう...」
続いてお師匠様が告げる。
「この世界の字など君には読めないだろうに...一度で覚えたまえよ。」
と渡してきたのはメモ書きされた紙っぺらだ。
優しい声の割には威圧感のある人だが、それでも僕の上司に比べたらましだと思う。僕はここで手伝いをすると決心した。
「いいかい?薬草各種2袋ずつ、火炎瓶4本、干し肉、保存食を買って来ておくれ。
出発は明日の朝...。日が落ちるまでに戻っておいで。」
(ホワイト企業だ...)
しっかり仕事内容を伝えてくれる上に定時退社とは...こんな会社に勤めたかったとしみじみ感じる。
「わかりました」
と元気に返事をし、今日は病室で休ませてもらう事になった。
最初のコメントを投稿しよう!