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"勝てない"
本能がそう察知する。
今の自分では、戦ったら確実に咬み殺されてしまうのだろう。
(する事はひとつしかない...)
僕は兎に背を向けると、全力で走った。
何度も躓き、何度も転んだ。 体が傷だらけになっても、ただひたすらに走る事しかできなかった。
「う、.....はぁッ、はぁ......」
どれくらいの距離を走っただろうか。
どれくらいの時間走り続けただろうか。
元々少ない体力に限界が訪れ、その場に跪いて嗚咽する。 しまいには目眩や頭痛までしてくる始末だ。
(死ぬのか....僕は....)
とうとう膝だけでも立っていられなくなり、その場に倒れ込んでしまう。
その瞬間、遥か後ろにいたはずのあの兎が僕に向かって走ってくるのが目に入った。
生きるか死ぬかの選択を強いられているというのに、僕の体は鉛のように重くなって瞬きをするのさえも億劫だった。
(ちくしょう...ちくしょう...)
異世界に夢を見ていた自分を心から恨んだ。あまりの悔しさに涙を流すと、僕へ兎が飛びかかる。
"終わりだ"
そんな言葉が頭の中に響く。
この20年間、僕は何をしてきたのだろう。成績ばかり良くて周りからの評価を気にして生きてきた人生の幕が閉じようとしていた。
「泣いてる暇があったら戦えっつーの!」
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